長く日本で男性型脱毛症の積極的な治療に遅れをとったのは、薄毛は遺伝であるという強い認識のせいではないかという説があります。薄毛研究の中で、さまざまな研究や実験が行われてきました。現在に至るまでの流れをみてみましょう。
脱毛は遺伝なのか?
高校の生物で習う「メンデルの法則」を覚えていますか?この遺伝の法則を男性型脱毛症にも当てはめた研究が行われました。
1916年、アメリカのドロシー・オズボーンが数十年におよぶ研究の結果、男性の脱毛は母方のハゲる遺伝子によって引き起こされると発表しました。しかし数年後、科学者たちはその実験結果が誤りとしています。
脱毛はホルモンによるものなのか?
遺伝と並んで脱毛を起こすと考えられたのがホルモン説です。1932年、J・ストランドベルグが世界で初めて発毛とホルモンの関係を明らかにしました。彼によると甲状腺ホルモンが両頭側部位を、女性ホルモンが頭頂部の発毛を支配しているというのです。
さらに1935年、ドイツの科学者が動物の睾丸から男性ホルモンのテストステロンを発見。これらの発見によってホルモンが毛髪に影響を与えることが定説となったようです。
ハミルトンによる学説
現在でも脱毛症の分類で使われる「ハミルトン・ノーウッド分類」のハミルトンは、ホルモンと遺伝が男性型脱毛症にどのように関わっているかの学説を発表しました。それによる結果は以下の通りです。
・思春期以前に去勢されていれば脱毛しない
・思春期以後に去勢された場合、家系にハゲた人がいる人のみがハゲる。しかし去勢した時点でハゲの進行は停止
・思春期以後の去勢者に、テストステロンを注射すると家系にハゲた人がいる人だけハゲる
これによると、男性型脱毛症がテストステロンによって引き起こされるし、家系的に遺伝もすることがわかったようです。
この学説は以後大きな論争となるようですが、脱毛症治療という意味では大きな投石となりました。
脱毛症の研究は古くから行われ、学説がくつがえされたり、定説となったりしながら、進化をしてきたのですね。