前東邦大学大橋病院皮膚科の斉藤隆三氏が2004〜2005年にかけて調査した、円形脱毛症の患者と医療機関へのアンケートがあります。これをまとめていくと、円形脱毛症患者と、医療機関の関係性が見えてきます。尚、ここで調査対象になったのは、難治性の患者さんです。
アンケートにみる患者と医療機関ギャップ
まず、医療機関に対して「円形脱毛症の治療を積極的に行っているか?」という質問をしたところ、積極的に行っているのが19%、通常の治療で対応しているのが59%、円形脱毛症の治療には消極的なのが0.3%、専門外来を設けているのが0.4%となっています。
それに対して、円形脱毛症を発症した患者は、すぐに治療を受けたのが67%、しばらく様子を見たのが24.2%となっています。
患者はすぐに治療したいのに、専門の受け入れ先が極端に少ないようです。まだ解明されていない事が多い分野とはいえ、もっと専門医が増えることを願わずにはいられませんね。
患者がクリニックジプシーになる理由
「これまで何カ所の施設を受診したか」という問いに、およそ50%の患者は3〜5カ所と答えています。その他の答えを見ても、98%程度の患者が2カ所以上を受診しています。
その理由は、
・治療効果が期待できないので自主的に……61.7%
・他院を紹介された……14.4%
・医師以外の治療を選んだ……0.6%
という結果となっています。
それもそのはずと納得できるのが、「治療効果はどうでしたか?」の質問に、38.3%の患者が「治らなかった」と答えており、「あまり変わらない」「悪化した」「再発した」と答えている人も合わせると、実に85%を越えているのです。
確かに、これでは病院を変えたくなるのもうなずけますね。
医療機関への不満
元々専門医の少ない分野である上に、疾患だけでなく、精神的な負担の大きな病気であることから、なかなか治らない場合の患者さんの気持ちは計り知れないものがあります。
医師の態度についても、病気の説明、治療方針の説明にマイナス評価の方が多く、特に「心理状態を考えてくれましたか?」という質問では、約50%が不満に思っているようです。
難治性の円形脱毛症は、有効な治療法が確定されていないだけに長期化することがあります。患者さんの心理状態まで、きちんと配慮してくれる医療機関を見つけることが大切ですね。
状態の説明や、治療方針の説明を、患者がわかるまでしっかり行ってくれる医師、精神状態まで気遣ってくれる医師に出会えるといいですね。
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