たとえば、自分では気付かない程度の軽い円形脱毛症の場合、数ヶ月で自然に治ることもあります。
しかし、何度もくり返したり、急激に広範囲に起きた場合はやはり治療が必要です。
日本皮膚科学会が2010年に発表した「円形脱毛症診療ガイドライン」には、患者の年齢、病変部の範囲、急性or慢性など、細かいフローチャートが記されています。
推奨度Aの治療法
ガイドラインによると、推奨度Aの治療法は、「局所免疫療法」と「ステロイド局所注射」です。この2つについて説明しましょう。
・局所免疫療法
脱毛した部分に、軽いかぶれを起こしながら治療します。
30年以上行われており、今も最も一般的な治療法です。
DPCPやSADBという化学物質を患部に注射し、軽いかぶれを起こします。
やや痒いくらいが効果的だと言われていますので、かゆみを伴います。安全性が高いのも特徴です。
単発型や多発型には効果が高く、7割程度の患者に効果が見られるといいます。一方で全頭型や汎発型には効果が低く、頭皮に色素沈着などが現れた場合には、継続するかどうか検討が必要です。
・ステロイド局所注射
皮内用の副腎皮質ステロイド注射薬を、脱毛部位に直接注射します。この際、痛みを伴うようです。
注射量には制限があり、脱毛範囲によっては1回の治療で何カ所も注射することになります。同じ場所には月1回程度の頻度が最適とされています。
その他の治療法
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ガイドラインによると、「行ってもよいが十分な根拠はない」とされる治療法が以下のものです。
・ステロイドパルス療法…広範囲に脱毛した場合、メチルプレドニゾロンを1日あたり500mg×3日間連続で点滴する
・ステロイド内服療法…プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド薬を内服する
・塩化カルプロニウム…外用薬。毛包やその周辺の血管拡張を誘導し、血流を増加させる
・セファランチン…内服薬。副腎および血中のコルチコステロンの酸性を高めるなど、免疫修飾作用がある
・グリチルリチン…グリチロン錠内服。抗炎症効果や免疫調整作用がある
・抗ヒスタミン薬…アトピー性皮膚炎との合併に局所免疫療法と併用すると良い結果があると報告
・紫外線療法…紫外線を皮膚に照射し、毛包周囲に浸潤している免疫細胞の働きを抑制する
いずれの治療法も、よく専門医師と相談してください。それには、自分がどの治療法に合っているのかを知ることが必要ですね!
数は少ないですが、脱毛外来を設けている皮膚科を、複数受診してみてセカンドオピニオンをとるのも大切です。
※参考文献「薄毛の科学」
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