【毛根鞘(もうこんしょう)】
皮膚の下では、髪の元となる細胞が分裂を繰り返して、役割ごとの形状を作り上げているようです。髪の中心にあたる部分の「毛幹」を竹の皮のように包み込んでいる層が、毛根鞘(もうこんしょう)とよばれる髪の外側の組織です。
毛根鞘は層になっているので、内側と外側に区別されます。内側にあたる内毛根鞘の機能は、まだよくわかっていないようですが、毛幹を絞って形を作るクリームの絞り器のような役割があるそうです。
毛幹の一番外側の組織である毛小皮と内毛根鞘小皮はきっちりかっちりかみ合わさっているため、毛幹が伸びるとともに内毛根鞘も伸びていくのだそうです。
毛根鞘の外側に位置する外毛根鞘は、皮膚とよく似た組織構造になっています。外毛根鞘は内毛根鞘を包んでいますから、内毛根鞘を安定化させたり、休止期に毛幹が抜けたりしないように支えたり、毛母細胞の供給源にもなってようなのです。
毛母は、その名が表すように毛の元となる細胞を生み出す母そのものです。髪の毛母細胞は3種類の毛幹細胞、3種類の内毛根鞘に分化してゆきます。
毛母細胞のすき間には黒っぽい色をした“色素細胞(毛幹にメラニンを供給する細胞)”がいつくもみられます。
毛包の色素細胞は、皮膚のそれと比べると、とても発達していて巨大なのが特徴のだそうです。
メラニンの役割は、紫外線を吸収して細胞の傷つきを防ぐことや、髪の色を出すことです。
パピラ(毛乳頭)は、毛包組織の増殖、分化には最も重要な組織で毛母に囲まれています。
その形は、玉ねぎの先端を細長く伸ばしたようだと言われています。
パピラは、パピラ細胞と細胞外マトリックスが大部分を占めていますが、毛細血管も発達しています。
また、毛包上部の毛穴近くは皮脂を出す皮脂腺と匂い物質を分泌するアポクリン腺が存在しています。
立毛筋(りつもうきん)は、毛を立ち上げたりする筋肉で、毛包の中ほどにあり、寒い時や興奮した時に毛を逆立てたりする役目をしています。
毛包は決まった方向で結合しているため、毛が向く方向は決まっているのです。
しかも毛包は神経に囲まれており、頬ひげをもつ動物などは感覚器官として神経はとくに発達しています。
神経の末端が細かく分かれ、外毛根鞘に結合しています。この発達によって、方向であったり、距離感であったりを脳へ正確に伝えることができるというのです。
人間には、頬ヒゲはありませんが、確かに髪の毛が何かにちょっとでも触れたりすると、敏感に反応しますよね。
髪を切っても痛くないのに、距離感や方向を感じることができるって不思議です。
参考文献 毛髪を科学する 松崎 貴著
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