広告によってそのイメージを大きく変えてきた商品は多数ありますが、かつらもその内のひとつです。かつらは生きるのに不可欠なものではありませんが、それには人にとって見た目が大きく作用することが関係しているのかもしれません。
かつらビジネスと消費社会
消費社会とは、生きていくために絶対に必要な訳ではないけれど、文化的、社会的な欲求を満たすために消費をする社会のことです。
音楽や映画、観劇などもこれに当たるでしょう。
かつらも生きていくのに不可欠ではありませんが、薄くなった自分の頭髪を多く見せたいという文化的な欲求によって消費される商品と言えますね。
ここで重要なのは、商品を買ったことでどのような改善が見られるのか、どのような良い人生になるのかということです。QOL(Quality of lifeの略で、生活の質の意味)という言葉もよく耳にしますが、まさにかつらもQOLに必要かどうかということが問われます。
ビフォー・アフター
現在では医療広告におけるビフォー・アフターの写真は厳しく規制されていますが、かつらが世の中で市民権を得るのに、この前後の比較広告は大きな貢献をしたようです。
ビフォー・アフターにはQOLの向上も、非常にわかりやすく表現されていて、薄毛に悩む世の男性たちの共感を誘ったのかもしれませんね。「髪の毛さえあれば……」という気持ちを、広告の比較写真がうまく購買意欲に結びつけたと言えるでしょう。
広告の中に自分を見る
こうした広告のビフォー・アフター写真の中に、かつら購入者は自分を映して見ているようです。薄毛を気にしている人の多くは、他者の目が気になる訳ですが、自分で自分を見てもいます。
つまり自己を客観的に見て、自分を吟味しているのですね。
このことを広告が表現していて、かつら購入者はまるで自分のことのように感じるようです。
消費社会においては、商品として規格化された体を手に入れて自分の心を修復するのだという説も。ただしかつらは基本的にオーダーメイドなので、規格化された商品とは言えないかもしれませんね。
まとめ
かつらは生きるのに不必要とはいえ、薄毛で悩んでいる人にとっては「これがなくては生きていけない」ものかもしれませんね。消費社会とは言っても、本当に必要なものは人によって違うとも言えます。
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