髪の毛のみならず、眉毛やまつげ、身体中の体毛は生える位置や方向があります。ではどのように生える位置や方向が決められているのでしょうか?そのメカニズムを紐解いてみましょう。
まるで都市計画?
頭部にのみ髪の毛が生え、眉毛の部分には眉毛、目の際にはまつげ、身体には産毛といった風に、場所によって毛の生え方や毛質、本数も違います。これは、どのように決定されているのでしょうか?
皮膚は身体の全体に対して、まずどの位置に毛が必要かを決めるそうです。頭髪、眉毛、まつげ、ひげ…という風に、位置と区域ごとの毛の特性を規定されるというのです。
これは、都市を造るのに土地の区画を整理して、利用目的を住宅地、商業地、公園といった風に大まかに決めていくことに似ています。
このように、まずは皮膚が大まかに区画整理をすることで毛の生える位置や毛の特性を決めているのですね。
毛になるには禁止信号が出されてる?
大まかに区画が分けられたら、次はひとつひとつのビルや家を建てる必要があります。他の組織では「ホメオボックス遺伝子群」が番地や座標のようなものを決めていき、よく似た多くの遺伝子がファミリーを形成し、それぞれの遺伝子がそれぞれの場所で発現していきます。
しかし、毛髪にはこのホメオボックス遺伝子群のパターンが見つかっていないというのです。
毛については、ある程度の距離を保っていることが大切で、表皮シートの中の、ある距離を置いたところにいる細胞だけが毛になると考えられています。
つまり、最初に毛になった細胞は、ある程度の範囲に「毛になってはいけない」という信号を出しているのではないかと考えられるのです。
毛の向きは最初から決まっている?
毛は斜めに生え、方向が一致しており、立毛筋によって直立するようになっています。ある実験によると、毛の発生段階で方向を変えてみても、また最初と同じ方向へと毛が生えたそうです。
このことから、毛の生える方向は最初から表皮にプログラムされていると予測されます。
私たちの毛髪は、このようにして生える場所を決定し、その特性を発現しているのですね。まだ解明されていないメカニズムも多いですが、とても不思議でよくできたシステムと言わざるを得ません。
※毛髪を科学するP53-58