まだ母胎の中にいる胎児の皮膚にはじめて毛が作られるとき、真皮集塊が毛芽を増殖して伸ばし、毛母細胞などの毛包組織になっていきます。まるで皮膚から毛包ができるのを導いているように見えますが、実はこれを誘導するすごい細胞がありました。
パピラ細胞とは?
まるで球根のような形で皮膚に埋まっている毛包の組織は、根元の部分に毛乳頭と呼ばれる部分があります。この毛乳頭のことを「パピラ」と呼んでおり、皮膚の表皮細胞を毛包に分化させる能力があるのです。
何でもない所にパピラがあれば、そこに毛ができてしまうと考えてしまいますよね?実際に、すでに完成された毛包からパピラを取りだし、皮膚に移植してみるとそこに新たな毛包が形成されたという報告もあるようです。
毛包を誘導する?
このパピラ細胞は、毛包ができる時に誘導する役割もしているようです。薄毛の研究には、毛包誘導がどのように起こっているかを、どのような物質によって引き起こされているのかが非常に重要です。
毛包誘導能力があるパピラ細胞は、毛包誘導能力をもたない線維芽細胞と比較すると、パピラ細胞だけではたらいている遺伝子やタンパク質があることもわかってきています。
パピラ細胞が皮膚を毛包に分化させるのなら、理論的にはパピラ細胞を毛を生やしたい部分に移植すればそこに毛が生えることになるのですから、研究が待たれますね。
パピラは再生する?
イギリスのネズミを使った実験によると、毛母を含むパピラごと切り取った毛が、しばらくするとまた毛が生えてきたというのです。
毛は毛周期によってある一定の期間で生え替わりますが、パピラを含む毛包ごと切り取ったのに、また同じ場所に再生するとはどういうことでしょうか?
これは、残っていた毛包の真皮毛根鞘細胞が集まって、新しいパピラを形成し、表皮が毛包、毛母細胞へと変化させたと考えられています。つまり、最初に毛が作られる時の真皮集塊に由来する細胞が残っていれば、毛包を誘導することができるということです。
毛の生えるしくみは、本当に奥が深くて興味深いですね!
ここまでわかっていれば、すぐに毛が生える方法もわかりそうなものですが、そこがまた一筋縄ではいかない所です。パピラの活性変化を何が支配しているのか、これからさらに研究が進むことでしょう。
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