毛包が形成されるときに細胞は大きく変化をします。
例)表皮細胞→毛芽細胞→毛母細胞→毛幹細胞→毛幹
このような変化を突き詰めると遺伝子発現の変化によって引き起こされることができます。
この遺伝子の役割は何なのかまだ明らかになっていませんが、発毛をコントロールできるようになる可能性は大いに期待出来るようです。
遺伝子について少しずつではありますが、わかってきたことがあります。
皮膚の表皮細胞が毛芽細胞に変化した直後に外見的変化は見られませんが、毛芽細胞内に新たに働き出す遺伝子が二つあり、一つはソニックヘッジホッグと呼ばれる遺伝子、もう一つがエルイーエフ1と呼ばれる転写調節因子です。
ソニックヘッジホッグと呼ばれる遺伝子は、神経や手足が作られるときにも働く分泌性タンパク質です。また、増殖因子やリセプター(受容体)を活性化する働きもあります。
エルイーエフ1と呼ばれる因子は、転写調節因子です。
転写調節因子と言われてもちょっと分かりにくいですよね??そこでこの「転写調節因子」とは何か?
「毛髪を科学する」という書籍の中で、この転写調節因子の事をこう記載されています。
「遺伝子DNAには、どのようなタンパク質を作るかの情報、つまりタンパク質のアミノ酸配列を三つの塩基からなるコドンのつながりとして表している「構造遺伝子」部分と、個々の構造遺伝子がいつどこではたらくかを規定する「調節遺伝子」部分があります。遺伝子がはたらくためには、RNAポリメラーゼによって構造遺伝子の情報がメッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、このmRNAが核から細胞質のリボソームへ運ばれたのち、タンパク質へと翻訳されなければなりません。その際、RNAポリメラーゼが目的の構造遺伝子をきちんとみつけられるようにはたらくのが転写調節因子です。」
かなり難しい内容でした。。。。
検索機能とか目次みたいなものでしょうか???
ただ、目的の情報を正確に見つけるためには、この転写調節因子は重要なカギであることというのは、十分わかります。
この転写調節因子ですが、単純なものではなく、たくさんの種類があるそうです。
転写調節因子が働く場所(細胞や臓器)もそれぞれに異なった種類の転写調節因子があったり、特定の時期にだけ働く転写調節因子もあるのだそうです。
それだけではなく、個々の構造遺伝子をちゃんと転写させるためには、転写調節因子が正しい組み合わせで結合する必要があるのです。転写調節因子によって、結合するべき塩基配列が違ってきます。そのことが時期特異的に違った遺伝子を発現するしかけのポイントになっています。
遺伝子の役割が分かれば発毛をコントロールできる??
転写調節因子の特徴がわかると、結合した遺伝子はどこで働く転写調節遺伝子になるなのかがわかります。
毛を構成するたんぱく質であるヘアーケラチンは、毛母と毛幹に発現します。それはなぜか。エルイーエフ1がヘアーケラチン遺伝子の調節遺伝子領域で結合することから、このエルイーエフ1が転写調節遺伝子として毛芽細胞で働いているからだということが考えられるのです。
ですが外毛根鞘(がいもうこんしょう)や内毛根鞘(ないもうこんしょう)は同じ毛芽細胞(もうがさいぼう)から作られますが、この毛包組織からはヘアーケラチンは作られません。ということは、ヘアーケラチンを発現させるためには、エルイーエフ1と別の転写調節遺伝子の組み合わせが必要ということも合わせてわかります。
エルイーエフ1を使った実験で、エルイーエフ1を表皮細胞を強制的に発現させた結果、本来毛のないところに毛が生えてきたり、毛包が作られたりとエルイーエフ1はヘアーケラチンだけでなく、毛包誘導にも大きく関わっていることが明らかにされました。
このエルイーエフ1を上手に使えば、発毛や育毛に使えるのではないか?と感じました。
ですが、書籍「毛髪を科学する」にも記載されていたのですが、生まれてすぐに毛がなくなってしまう遺伝性の全身脱毛症の方に関しては、突然変異の原因因子ではないかと考えられているそうで、このエルイーエフ1とはまた異なる遺伝子のようです。
《たかが髪の毛、されど髪の毛!》髪の毛一つ育てるのも、ものすごい遺伝子の働きがあるのだということがわかりました。
なんだか、髪の毛1本たりとも雑に扱わないようにしないといけないなと反省しました。
参考文献 毛髪を科学する 松崎 貴著
23