皮膚が新陳代謝を繰り返しているのは周知の事実です。生活環境、年齢、健康状態で多少の違いはありますが、細胞分裂の周期は成人で20日に1度と言われています。
細胞分裂をしているのは、表皮の最下層にある細胞です。最下層は基底膜という膜に接しているので、基底層と呼ばれ、細胞を基底細胞と呼びます。(下図)
<図 表皮細胞の分化>
分裂で増えた細胞を娘細胞と言いますが、その娘細胞のうちひとつだけ基底層に残り細胞分裂を繰り返します。種イモのようなものですかね。
基底膜から離れた娘細胞は有棘(ゆうきょく)細胞という細胞になり、基底細胞が分裂を繰り返すたびに押し上げられ、4~6週間かけて角質化した角化細胞へと変化していきます。さらに2週間ほど経つと体の表面にたどり着き、剥がれ落ちていきます。
この有棘(ゆうきょく)細胞が角化細胞へと変化する過程で、細胞質に顆粒構造が目立つようになり、この状態を顆粒細胞と呼びます。
さらに顆粒細胞が崩壊すると、構成成分がケラチンと呼ばれる線維状タンパク質と結合してとても強い複合体を作ります。それと同じときに細胞膜にタンパク質の一部と脂質が新着してしまい、最後にはタンパク質や核が分解されなくなり、細胞内の水分含量の低下して死んだ角化細胞になっていきます。
死んでしまった角化細胞はうろこ状に潰れ薄くなっています。生きている角化細胞に比べとても硬く、外部からの物理的刺激から体を守っています。
角化細胞の性質のもとになっているのが、ケラチン複合体と特殊な細胞膜です。
この特殊な細胞膜は保水性に富み、脂質成分を多く含むために常に適度な水分を保持しています。だから人間などの哺乳類の皮膚は、魚のうろこと違って柔軟でしなやかなのです。
角化細胞は何層にも積み重なっています。場所によっては100層以上も重なっています。その積み重なった角化細胞は、すぐに体表から剥がれ落ちるのでなく、順番に剥がれ落ちていきます。
なぜすぐに剥がれ落ちないのか?それは角化層には、外部からの物理的刺激から体を守る役目と、水中などの水分過剰な中でも対応でき、また砂漠など極度の乾燥状態の環境でも生活できるようにする役割があるからなのです。
参考文献 毛髪を科学する 松崎 貴著
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