そもそも体を毛で覆うメリットって何??
① 保温 ② 保護作用 ③保護色 ④ センサー機能 ⑤ コミュニケーション機能 の5つがあげられます。
1.保温効果
哺乳類は周囲の温度が高い低いに関わらず、体温を一定に保つ恒温動物なので、常に体内で熱を発しなくてはいけません。せっかく熱を発生しても、気温や水温が低ければ、常に体の表面から熱を奪われてしまいますから、それを防ぐ必要が出てきます。断熱は空気の層を体の周囲に保持することで効果が得られます。
毛は死んだ細胞からできているため、毛自体から放熱されることはありません。立毛筋の働きで毛を直立させれば、より多くの空気を毛と毛の間に留めることができるので、とても良い保温組織となります。毛糸のセーターも、毛足が長い毛糸のセーターの方が温かいのも、同じ理由です。
しかも毛は、皮膚から一定方向の斜めに伸びているため、水に濡れても水が体の上を滑り落ちます。そのおかげで必要以上に体が濡れたりせず、体温の低下を防ぎます。
2.保護作用
体毛は、保温効果のほかにも太陽熱や紫外線から体を守る保護作用をもっています。
太陽熱、紫外線が直接肌にあたらないようにさえぎってくれます。真夏に薄いカーテンをするだけでお部屋が暑くならなくなるのと同じような役目ですね。
3.保護色
また、体毛を土地や季節、背景などに溶け込む体毛を生え変わらせることによって、外敵や獲物から見つかりにくくする保護色の役割も担っています。
寒い地域、雪の上で暮らすシロクマの毛が白かったり、アザラシは子供の頃は地表で暮らすので毛が茶色ですが成長するとともに水中生活が始まると灰色の毛に変わります。
4.センサー機能
そして4番目のセンサー機能としては、動物にはとても大事な空間を把握する機能があります。
毛包組織に神経の末端が接触しているので、毛に何かが触れると脳に伝達されるというわけです。
そのセンサー機能のおかげで、相手との距離感だったり、暗闇や狭いすき間を通り抜けられるのです。
5.コミュニケーション機能
最後に5番目の機能としてコミュニケーション機能です。
哺乳類には毛とセットになって存在するアポクリン腺という汗腺があります。
汗腺には、アポクリン腺とエクリン腺があります。そのうちアポクリン腺からは、様々な匂い物質が分泌され個体識別や縄張りの主張ができたり、異性を誘うフェロモン効果も担っていると言われています。
動物ではほぼ全ての体毛にアポクリン腺が見られますが、人間には脇毛や陰毛の限られた場所にしかこのアポクリン腺はありません。
私たち祖先が生殖のためのコミュニケーションの手段にアポクリン腺を使っていたため、限られた毛だけが残ったのではないかと考えられています。
動物は、外敵に会った時に毛を逆立て、威嚇して体を大きく見せようとしたり、仲間同士の毛づくろいをするなどコミュニケーションツールとしても役立っています。
参考文献 毛髪を科学する 松崎 貴著
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