古くから「ハゲ」はからかいの対象とされ、それによって薄毛の人は悩み、隠そうと努力してきました。しかし、ハゲという身体的特徴をからかいの対象とするのは、社会的な分析からどのような特徴があるのでしょうか。
からかいはジョーク?
ハゲをからかう第一の特徴とされているのが、「冗談」であるということです。つまり、からかっている側は相手をたたきのめすような意図を持って言っているのではなく、遊びの延長のようなものだと言うのです。
言われた方は冗談どころではありませんが、しかしながら、相手が冗談で言っているとわかっているから「傷つかない」「気にしない」ことができたという事実もあるようです。
からかいのほとんどは男性から?
ハゲに対するからかいのほとんどは、男性からなされているというのも特徴的です。女性からのからかいはほぼ見られず、あったとしても「トウサンはハゲているけれどいい男」という、ある意味では褒め言葉になっています。
そしてからかわれた側は、からかいの言葉への対応に困惑しているという特徴もあるようです。腹は立つけれど事実だし、冗談なのだろうし、怒ったり抗議したりするのはどうかと対応に困る訳です。
多くは黙って無視したり、バーコード頭にしたりして予防策を講じているようです。
からかいは真面目に受け止めてはいけない?
からかいは社会的相互行為であるとして研究した江原由美子氏の「からかいの政治学」によると、からかいの構造とは、遊びの文脈に基づいているとしています。したがって、からかいの言葉を真面目に受け止めてはいけないというルールが要請されるというのです。
からかいには「匿名的・普遍的・自明的」であり、発信者はその責任を免除されるので、からかわれた方は真面目に受け取って対応してはいけないとしているようです。
まるで現在のSNSでの問題のようでもありますが、からかわれた方に我慢を強い、受け流すようにと押しつけるのはとても理不尽ですね。
※ハゲを生きる P160-164