当サイトでも取り上げてきた板見智著『専門医が語る毛髪科学最前線』と、大矢全節著『無毛症と禿頭』の2冊の本は、両方とも皮膚科を専門とする医師によって書かれた本です。この2冊にみる、医学的な薄毛の見方について見ていきましょう。
板見氏の見方
皮膚科である板見氏の著書の内容は、男性型脱毛症の発生メカニズムについて詳しく述べられています。男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロンに変化し、これが毛乳頭細胞にある受容体に結合して発毛が抑制されるというもの。
しかしながら同じ男性ホルモンがヒゲの発育を促進し、一方の頭髪は抑制することに注目しながら、フィナステリド(プロペシア)やミノキシジルによる治療が有効だとしています。
大矢氏の見方
皮膚科と医学史を専門とする大矢氏は、毛髪は皮膚の一部とみなし、皮膚のメカニズムから詳しく説明します。その後、毛髪の発生や成長、抜け毛、再生と進み、ハゲ頭は毛髪や頭皮の疾患の一症例であるとして取り上げられています。
ただしここで取り上げるのは円形脱毛症が主で、男性型脱毛症や壮年性脱毛症(脂漏性禿髪)にはわずかなページしか割かれていません。
両者の違い
板見氏の本は、男性型脱毛症の治療法から入り、その後移植やかつらを紹介し、さらにその後に円形脱毛症へ移ります。実に著書の半分以上を男性型脱毛症に割いているのです。
大矢氏の方は、最初に髪のメカニズムから疾患について書かれ、その疾患のひとつとして毛髪が少なくなる症状として紹介されています。
この違いは、想定される読者層の違いからではないかと想像されます。
つまり、前者は薄毛に悩む一般読者、後者は皮膚医療を学ぶ医学生を対象に書かれているようです。
当時、男性型脱毛症は「皮膚の個性」とされていて、医師も積極的には治療していませんでした。男性型脱毛症の治療に保険が適用されていないことから、実は今でも病気とは考えられていないもかもしれませんね。
同じ皮膚科を専門とする医師でも、誰を対象にするかで著書の内容は大きく変わるようです。ここでは薄毛に悩む一般の人にもわかりやすく、あらゆる面から薄毛について紹介していますよ!
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